「後期高齢者」導入から1年、迷走 2009/ 3/26 YOMIURI ONLINE
抜本見直し進まず、改善重ねて制度も複雑化
75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度(長寿医療制度)が導入されてから4月1日で1年を迎える。
保険料の年金天引きなど導入当初の混乱は、度重なる運用改善の結果、沈静化に向かっている。その反面、抜本見直しに向けた機運はしぼみつつある。
厚労族巻き返し
「保険料をもっと安くするため補正予算で手当てすべきだ。高齢者の信頼を回復しないと大変な結果になる」
25日の自民党医療委員会の会合。後期高齢者医療制度の見直しについて、次期衆院選をにらみ、木村義雄・元厚生労働副大臣らから、高齢者の負担軽減を求める意見が相次いだ。一方で、伊吹文明・元財務相は「毎年補正を組むわけにはいかない。長期的に財源を確保できない限り、制度は安定しない。財源論をしないといけない」と指摘した。
75歳以上の高齢者ら約1300万人が加入し、2008年4月に始まった公的医療保険「後期高齢者医療制度」。その見直し論議は、08年9月の自民党総裁選中に舛添厚生労働相が突然、1年をめどに同制度を抜本的に見直すことを表明して始まった。舛添氏は「年齢区分しない」「世代間の対立を助長しない」など3原則を掲げ、麻生首相もこれに同調した。
ただ、麻生政権の意気込みにもかかわらず、その後の見直し論議は迷走を続けている。制度を擁護してきた自民党厚生労働族議員らの巻き返しで、議論の主導権が与党側に移ったことが背景にある。
日本医療政策機構が2月に公表した世論調査では、後期高齢者医療制度について、修正を含め、基本的に維持すべきだとの回答がほぼ半数に達した。また、制度を運営する各都道府県の広域連合からも大幅な制度変更に慎重な声も出ている。
こうしたことを踏まえ、厚労相の肝いりで設置された「高齢者医療制度に関する検討会」は3月17日に報告書をまとめたが、「高齢者の尊厳を損なう」として「後期高齢者」の名称変更を求めたのみだった。財源や年齢区分など制度の根幹に関する点は複数意見を列挙するにとどまった。
与党が進める見直しは、現行制度の枠組みを維持したうえでの修正案になる方向だ。次期衆院選が夏以降になるのではないかとの観測が出るなか、自民党内では、「急いで制度を具体化し、わざわざ問題を大きくする必要はない」との声が広がっている。
「ゆがみ」指摘も
後期高齢者医療制度導入前の老人保健制度は、医療費を支援する現役世代の負担に歯止めがかからない恐れがあった。このため後期高齢者医療制度は75歳以上の医療給付約11兆円の負担割合を公費5割、現役世代の保険料4割、高齢者の保険料1割と定め、高齢者に応分の負担を求めた。
導入時には周知不足もあり、75歳以上を他の医療保険から切り離して別建ての制度にした点が強調され、「現代のうば捨て山制度だ」として、高齢者の強い反発を招いた。保険料徴収の強制的な年金天引きにも批判が集中した。
政府・与党は高齢者の不満を解消するため、保険料軽減や診療報酬の見直しなど運用改善を繰り返してきた。ただ、かえって制度は、複雑なものになっている。同じ高齢者でも、扶養者である子が会社員か自営業者かによって、保険料の軽減措置が異なるなどの「制度のゆがみ」も指摘されている。
前期高齢者
08年4月の制度改正では、後期高齢者医療制度と同時に、65~74歳の前期高齢者医療制度も導入された。高齢者の医療サービスは以前と同じだが、医療費の財政支援の仕組みが変わり、健保組合の財政を圧迫している。負担増を理由に08年度に西濃運輸などの14組合が解散し、4月も約10組合が解散する予定だ。
健康保険組合連合会は昨年11月の全国大会で「財政悪化は、前期高齢者医療制度の過大な納付金負担にある」として、国に財政支援を求める決議を行った。現役世代の負担のあり方も課題になるなか、厚労省幹部は「支援には巨額財源が必要だが、確保できる見通しはない」と及び腰だ。
一方、70~74歳の前期高齢者の医療費窓口負担は08年度に1割から2割に引き上げられる予定だったが、与党は08、09年度と続けて1割に凍結している。必要な費用も約3700億円に上っている。
保険料、最低月350円に…4月から
後期高齢者医療制度は、4月1日から、新たな改善措置が実施される。
最大の特徴は、低所得者への保険料軽減措置がさらに手厚くなることだ。年金収入が年80万円以下の約270万人は、保険料のうち定額で負担する「均等割」の軽減割合が、08年度の8割5分から9割に拡充される。08年4月の制度導入時と比べると保険料は3分の1に減り、月350円程度に下がる。9割軽減は恒久措置化され、09年度に必要な費用は約230億円。
ただ、年金収入が年80万円超~168万円以下の約200万人については、08年度は地方自治体のシステム開発が間に合わなかったために、暫定的に均等割の8割5分軽減の適用を受けていたが、09年度は元の7割軽減に戻り、負担が増える。
年金収入が年153万円超~211万円以下の約90万人についても、保険料のうち収入に応じて負担する「所得割」の軽減措置が恒久化され、08年度に続き、5割軽減の適用を受ける。経費は約90億円を見込んでいる。
一方、高齢者に不評だった保険料徴収の年金天引きについては、本人や世帯主らの口座振替での支払いへの切り替えを4月から、原則的に認めるようにする。08年10月から、一部の高齢者に限って実施していた措置を拡大するものだ。
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